【読書記録】読んでいない本について堂々と語る方法

読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)

 『本を読む本』を引っ張り出したついでに、ピエール・バイヤール先生の『読んでいない本について堂々と語る方法』も思い出したので記録を書いておく。

 

【ザックリ内容】

 まず「読んでいない」という言葉から、あなたはどのような状態を思い浮かべるだろうか?この本は、「本を読んでいない」とはどういう状態なのかという地点から話をはじめる。

 「本を読んでいない」を「分類して考える」と聞くと不思議に感じる人もいるかもしれない。しかし考えてみてほしい。学生時代に「全然勉強していない」などと言いながらテストで高得点を取る人を。そのクチの人もいるかもしれないが、彼・彼女らは「勉強していない」の基準が周囲と違う、たぶん。もしかすると、彼・彼女らの中では「9割取れて普通」のような考えだったのかもしれない。

 そんな議論は置いておいて。この本では「読んでいない」を、「まったく触れていない」から、「読んだけど忘れた」まで幅広くとる。その結果として、「本を読む」という行為を、特定のテキストの文字列を追うという凝り固まったイメージから、テキスト外の文脈を含めたより全体的な方向性・書物の空気を読む形へと誘う。

 この「読んでいない」を基礎として議論は展開する。「私たちが読んでいるのは本そのものではなく、自分の心の中にあるその本に対するイメージだ(要約)」というスリリングな議論を経由して、タイトルにある通り本を語る方法に話が移る。

 語る方法は、大雑把に書くと「堂々と自分を語れ」ということ。詳しくは本を読んでほしい。

 

 

【感想】

 これを読んでいる時に、「読んだけど忘れた」という状態も「読んでいない」に含めているのが、私には印象的でしたね。「確かに、面白かった記憶以外何も覚えていない」ということ、恥ずかしながら多々あります。しかし、そういう作品について簡単なおしゃべりくらいなら出来るのは、生活の経験からしてあります。間違っているなんて誰が言えるでしょうか?

 とは言っても、あくまで「コメントせざるを得ない背水の陣的状況用」という印象が強かったです。内容的にも「したくない書評をする」みたいな、業務的な例が引かれていますし。

 目の前の本が世界全体の遍く知識の中で、どの文脈に位置しているかを知ることで本の内容にアタリをつける旨は、確かにそれは意識するか否かに関わらず、多分みんな多少は使っているのです。しかし、書評で使うにはかなりの知識レベルが必要になるわけですよね。残念ながら私にはそんな器用なこと出来ません。というか、ブログ内ではそんな状況にはならないでしょうから多分使うことも無いでしょう。

 

 そんなわけで、コメントする際の心がまえは最大級で使えます(現状使っている、つもり)し、本を読むということがどういうことかを考える良いきっかけになるいい本です。ただ、ある程度は本を読んで頭を捻っておかなきゃいけないんだろうなって思うので、私は今まで通り読んでいきます。

【了】