『若おかみは小学生!』の映画とTV版を観ての感想とか。

 『若おかみは小学生』がネットのトレンドに入っていたのは記憶に新しい。というか、Eテレで劇場版が放送されたことがトレンド入りのキッカケだ。

 

 さて、私はこの『若おかみは小学生』のTVアニメ版を観たうえでこの劇場アニメ版を観たのだけれど、あまりの違いにびっくりした。うん。あんまりにも違い過ぎたのでTVアニメ版を見直してしまった。どちらかに優劣を付けるなんて無粋なことはしない。けれど、違ったところをつらつらと書いておきたい。一応最初に断わっておくと、原作の小説については未読なので悪しからず。

*以下多少のネタバレが含まれます。気になる人はお気を付けください。

 

 

 

 

 

 

 

 まずは全体像のお話。

 一応両方のバージョンで共通しているお話を簡単に説明しておくと後々楽なのでここで書いておく。

 主人公のおっこ(関織子)は両親を自動車事故で亡くしてしまい、母方の実家に引き取られる。実家は「花の湯温泉」という温泉街で「春の屋」という旅館を営んでいる。おばあちゃんの峰子と仲居さん、そして料理長で回している小さな旅館だった。春の屋についたおっこは気丈に振舞うも自室で親のことなどを考えてしまう。そんなところに、幽霊の少年「ウリ坊」が現れる。色々とあって、おっこはおばあちゃん達に若女将になると宣言することになり、また幽霊の「美陽」や「鈴鬼」という鬼と友達になりながら、若女将修行に精を出すことになる。

 というものだ。ナチュラルに鬼とか幽霊が出てくるところがとてもクールだと思うね、私は。

 

 

まずは時間的にTVアニメ版から。

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 2018年の土曜朝7:15~7:30まで放送されていた。キャストは基本的に劇場版と共通している。全24話で2クール一緒に放送されていた。7:00からは『こねこのチー』のCGアニメが一緒に放送されていたと記憶している。クロスファイトビーダマンesからビーストサーガの流れと同じだと考えてもらえれば分かりやすい。

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*ビーストサーガのアニメOPはアツくてお勧め。 

 

 TV版のお話は、主人公のおっこが実家の旅館「春の屋」若女将として、四苦八苦七転八倒しながらも明るく困難を突破する爽やかな話でまとまっている。土曜の朝7時台で観たら清々しいアニメで、とても元気が出る作品だ。

 両親の事故の話はそこまで前面に出ることなく、ぼーっと見ているとそんなことがあったのを忘れてしまいしまいかねない。おばあちゃんがそこまで体調良くなさそうなことも書かれてはいるけど、あくまで深くは踏み込まない。

 このお話はとても女の子たちに対して丁寧に作られていると思う。対象の女の子たちが何歳ごろなのか分からないけれど、「お仕事系」のお話は女の子文化圏で善かれ悪しかれ提供されていることが私の観測範囲では散見される。そのような文化圏でかなりの選球眼がある諸先輩方に、お仕事系で直球勝負を仕掛けているように思う(まぁ、除霊師とか龍神とかも出てくるからそうじゃないかもだけど)。

ピカピカナース物語 小児科はいつも大騒ぎ for Nintendo Switch
 

*少なくともDSからあるお仕事系、ピカピカナース物語。獣医とかそういうの見かけるよ。

 

 また、リアルで流れる半年という時間を使いおっこさんやその他のキャラに愛着をもって視聴できる。どちらかというと、日常系というかサザエさん的な感じだ。楽しんで見れる。

 日常に溶け込んだアニメという感じだ。

 

 

それに対して劇場アニメ版だ。

若おかみは小学生!

 劇場版はTV版が終わったあたりの2018年の9月に放映された。TV版の最終回が特別編で、半分が映画宣伝だったことを記憶している。

 そんなTV版よりか絵が少し丸っこくなった劇場版だが、内容はシャープになった。TV版がほのぼの日常お仕事系だとしたら、劇場版は人間成長感動物語に仕上がっている。劇場版はやはり時間の都合上、キャラの登場方法や、お客様のエピソードが違う。これは見比べると面白い。映像がキレイなど色々言いたいことはあるけれど、1時間半程度の物語へのブラッシュアップの仕方がすごい。人間成長の物語にするために、制作陣はおっこさんに対して両親の不在に対して真正面から向い合せている。仮面ライダーアマゾンズシーズン2に負けず劣らずの鬼だ。

劇場版 仮面ライダーアマゾンズ Season2 輪廻
 

*アマゾンズseason2 の主人公千翼の身の上は、食べたクレープを吐き出しそうになるレベルでキツイ。

 

 TV版はおっこさんが電車に乗るところから始まるのに対して、両親との仲睦まじい様子から始まる(おいおい)。両親と神楽を見て、色々な話をした後、おっこさんが一言「でも、もうそろそろ帰らないとまた渋滞だよ?」と言って、高速道路を通って家へと向かう。そのまま事故に遭い、おばあちゃんのところに赴くところでタイトルが入る。

 青い鳥文庫の本編(映画小説化じゃないもの)でこのような描写があるのか分からないが、見た瞬間泣きそうになった。製作がおっこさんに親でも殺されたのかと勘繰りたくなるレベルだ。自分が余計な一言を言ったから事故に遭ったなんて考えかねないじゃん。劇場版ではその他にもおっこさんが親の幻を観たり、トラウマから過呼吸を起こしたりするがテレビ版ではみられなかった描写だ。観た人は分かると思うが、最後のお客様のセッティングも意地が悪いのが注目ポイント。これらを通して事故で生まれた心の傷とある程度の和解を果たし、成長するところを劇的に描いている。

 また、劇場版は「花の湯温泉のお湯は誰も拒まない。神様からいただいたものだから」という旨をかなり強調する。TV版ってそんな話があったっけ?最終話では龍神様との対話篇を繰り広げてたから見逃したのかもしれない。劇場版ではこの言葉がかなり重要な役割をするから、そこまでの表現なことは言うまでもないのだけれど。

 

 少なくとも、朝7時台から見て「よし、頑張るぞ」ってなれる物語ではないように思う。朝からにしては少し重たい。『純と愛』は8時からでも胃もたれおこしそうだったので、下手するとあんな感じになったと思う。

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*面白かったけれど、『ヘボット』同様寝起きに見るにはカロリーが高かった朝ドラ。

 

 確かプリキュア映画の尺は1時間くらいが多かったはずなので、それよりも大きなお友達をターゲットにして、大人層をしっかりと取り込もうとしているのかなと思う。仮面ライダーの春映画が1時間半くらいだったから正直何とも言えないけど。

 

 

 原作を読んでいないから楽しめたのか、原作を読んでいた方がより楽しめるのか分からないけれど、こんな感じでフォーマットやお話の違いを楽しめるのってやっぱり面白いし、どっちから見ても楽しめるってすごい。アニメ版を見てから劇場版を観ると「こんなにヤバい精神状態の子やったんか…」と思ってしまうし、劇場版を見てからTV版を観ると「こんなに真月さん(ピンクのフリフリの女の子)とかと明るく生きる世界線があってよかったねぇ」ってなる。甘いものと塩辛いもののループみたいなものを作っている。体に悪いけれど、そういうのって絶対においしい食べ物だ。

 

 原作小説を読む年代をマジックツリーハウスシリーズで過ごしたので、今更ながら小説を読んでみてもいいかもしれないなぁとか思った。